診療のご案内
骨粗鬆症
骨粗鬆症について
わが国の骨粗鬆症患者は約1280万人(男性300万人、女性980万人)といわれていますが、適切な治療を受けている割合は低いとされています。健康診断に骨密度検査が行われたのは全国平均で4%と、医療者や行政の関心がまだ低いことが原因の一つであると考えられます。
骨粗鬆症は既に標準的な診断や治療が確立しているにもかかわらず、骨折後に適切な骨粗鬆症治療による再骨折の予防が行われていない割合は80%に上ると推定されています。
骨粗鬆症は致死的疾患
骨粗鬆症および骨粗鬆症性骨折は、単なる老化現象ではなく、日常生活活動や生活の質を損なうだけではなく、致死的疾患であり予後を悪化させます。全ての臨床的な骨折は、死亡相対リスクを2.0倍増加させ、特に大腿骨近位部骨折では6.7倍、椎体骨折では8.6倍も死亡相対リスクが増加します。椎体骨折後の5年間に約40%、大腿骨近位部骨折後の5年間に約50%が死亡するとされ極めて予後不良であることが明らかになっています。
また、心疾患リスクである生活習慣病と大腿骨近位部骨折リスクは、2型糖尿病で1.7倍、慢性腎臓病で2.32倍と高くなっています。心疾患と大腿骨近位部骨折リスクは、虚血性心疾患後は2.32倍、心不全後は4.40倍と非常に高くなっています。
骨粗鬆症に対する運動療法
骨粗鬆症に関連する脆弱性骨折を抑制するには、成人期に獲得されるpeak bone massを高めること、閉経後にみられる骨量減少を最小化し、脊柱後湾の進行を抑制すること、高齢期では骨量を維持・増加させ、転倒を防止することが重要です。
閉経後女性に対する運動の骨密度維持・増加効果についての報告
- 有酸素荷重運動により腰椎骨密度は1.79%増加
- ウォーキングにより腰椎および大腿骨近位部骨密度は、それぞれ1.31%、0.92%増加
- 運動により大腿骨頚部および腰椎骨密度は、それぞれ1.03%、0.85%増加
- 特に下肢筋力訓練により大腿骨頚部骨密度は1.03%増加
- 複合運動(荷重運動と筋力訓練)により腰椎骨密度は3.22%増加
これらの報告は、閉経後女性において、骨密度維持・増加には荷重や筋力が重要であることを意味し、
適切な運動は骨密度維持・増加に有用であることを示しています。
骨粗鬆症と外来心臓リハビリテーション
心疾患患者さんの多くは、生活習慣病などの慢性疾患を罹患していることや、高齢者であることから、骨折リスクが高いと考えられ、適切な骨粗鬆症診療の早期介入が望まれます。
当院の外来心臓リハビリテーションでは、致死的リスクの回避、要介護の回避、生活の質の向上、生命予後改善のためにも、骨粗鬆症対策は必須と考えており取り組みを行っております。患者さんの通院回数が多く、週一回皮下注射製剤の継続や生活指導が容易であり、また運動療法が骨粗鬆症治療になり得ることなどから、心リハにおける包括的疾病管理プログラムの必須項目のひとつとして骨粗鬆症対策を取り入れて診療にあたっています。